春待つ花のように
「生きている方が辛いこともあると思いますよ。彼女の場合、元国王の妻として世間から色眼鏡で見られるでしょうから」

「彼女はとても純粋な女性でした」

「どんな言葉をかけられても、彼女を守る自信はありましたか?」

「…それは、どうかな」

 ユズキは哀しげな表情で苦笑した。たとえ生きていたとしても、彼女のことを守る事が出来たかはわからない。

 元王妃としての生活はまわりからどんな重圧がかかるかは計り知れない。彼女の精神はそんなに強いものじゃないことは、自分が一番よく知っている。

 夫婦一緒に死を遂げることが出来た。それだけでも喜ぶべきなのかもしれない。

「カインさんは後悔しましたか?」

 彼の質問に、カインは口を緩めると何も答えずに彼に背を向けて歩き出した。

 この10年、彼がどんな生活をしてきたか。ゼクスや他の仲間から掻い摘んで聞いている。

 ガーネの死を悔いている。彼女は死を自ら選んだ。

 だから彼を責めてはいけない。それはわかっている。でもどんな風に彼女を愛していたのか、知りたいユズキだった。
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