春待つ花のように
「はっきり何処が変わったっていうわけではないんだけど…」

 ローラは下を向いてしまう。仕込みの手もすっかり止めてしまっている。カウンターを挟んで立っている2人。

 ノアルはカウンターに置いてある箱を綺麗に並べ替えると、近くにある椅子に腰を下ろした。

「雰囲気が前と違うっていうのかな」

「女の勘ね」

 2階から、楽しそうな顔をしてイブが降りてきた。ノアルとローラの会話を聞いていたのだろう。

 意味ありげな笑みを浮かべている。イブは階段を下りると、カウンターに入った。

「『女の勘』かよ」

 ノアルは面倒くさそうに呟く。

「あら、女の勘は的中するのよ。甘く見ないで欲しいわね。…女、いるでしょ?」

 イブはノアルの顔の前で小指を立てると、ウインクをする。

「は? 何処にそんな時間があるって言うんだよ」

「あら、時間なんて関係ないんじゃないの? 男と女がいれば、恋愛は成立するもの」

 イブはカウンターに置いてある箱を持ち上げると、キッチンの横にある棚に置き、中身を取り出して調理しやすいように整理をしていく。

「無茶苦茶な。俺、もう行くから」

 ノアルは席を立つと、店のドアに向かって歩き出した。
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