春待つ花のように
「ノアル、ローラの気持ち 知っているんでしょ?」

 イブが大きな声を出す。彼女の言葉にノアルは一度足を止めて、振り返った。視線の先には困った顔をしているローラがいた。

 確かに、ローラの自分への想いは前から知っている。でも彼女は、自分にとっては妹のような存在で、恋愛の対象としては見れないのだ。

 スラムで生活している人たち全員が、自分の大切な家族。家族は家族であって、たとえ女性であっても『女』としては見れない自分がいた。

「あの…」

 ローラは小さな声を出す。この空気、自分には重すぎる。どうにかして、話題を変えたいと思う彼女だった。

「仕事に遅れるから」

 静かにノアルは言うと無表情のまま、外に出て行った。イブは不満そうにため息をつくと、ゆっくり閉まっていく扉に果物を投げつけた。

「この甲斐性無し!!」










 ノアルはベッドに寄りかかり、自分に抱きついているマリナとキスをする。

 両足の上に彼女が座り、首に絡みつくようにまわされている彼女の手が温かかくて気持ち良い。

「これ以上は…」

 またキスをしようとするマリナの唇に、ノアルは手をつけて制止させた。
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