春待つ花のように
「レイとはそういう関係なんだろ?」

 ノアルは落ち着いた口調で質問をする。そんなことはとっくに知っている。

 レイの別荘で大切に扱われているのだ。レイと体の関係があって、それが嫌で彼女が自分に甘えてきている。

 わかっていて聞いてしまう自分も自分だ。きっと彼女だって出来れば言いたくないことだろう。

 でも聞きたかった。レイよりも自分の方がいい。その一言が欲しかった。

「黙ってたらわからない」

 ただただ首を横に振っているマリナにノアルは返事を催促する。

「ノアル、私は…私は…。お願い、私を抱いて」

 ノアルは小さくため息をすると、マリナの肩を押した。

「それは出来ない」
 
マリナから離れると、ノアルは着衣を整えながら立ち上がった。

聞きたかった一言が聞けなかった。もし彼女から、聞けていたら、ベッドに押し倒していたかもしれない。

 結局、彼女はレイのモノ。自分がどんなに足掻いても、彼女と一生を共にすることは出来ない。

 それなら、せめて心だけは自分に向いていて欲しい。そう思ったことはいけないことだったのだろうか。

「ノアル…」

 マリナは急いで立ち上がり、ノアルの手を掴む。

 彼の背中は、さっきまでのノアルとは違い、冷たい空気を放っていた。
< 30 / 266 >

この作品をシェア

pagetop