春待つ花のように
「レイと関係を持ちながらも、俺とも…そういう訳にはいかないだろ」

 マリナの手を払うと、ノアルは大股で部屋を出て行った。

 彼女の部屋のドアを閉めると、目の前にはゼクスが無表情で立っていた。ノアルは目を大きくあけると、生唾を飲み込んだ。

 今の部屋でのやり取りを彼に聞かれていたのだろうか。

「ノアル様? ノアル・アスラン…」

 思わずゼクスの言葉に、ノアルの表情は固まる。なぜその名前を知っているのか。

「誰のことだか…」

 声が上ずるノアル。平常心を保ちたいところだが、ゼクスの確信を持った顔を見ると、心臓が高鳴ってしまった。

「ノアル様、ずっとお会いしたかった…」

 ゼクスは嬉しそうな顔をすると、眩しそうにノアルのことを見つめだした。

「誰かと間違っているみたいですよ」

 ノアルは、ゼクスから目を逸らすと小走りでその場から逃げ出した。












『ノアル様、お手伝いします』

 ノアルはため息をつくと、窓から星空を眺めた。自分の部屋が一番安心する。今日ほど、そう思ったことはなかった。

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