春待つ花のように
 先日、ゼクスに昔の自分を知られた。それ以来、仕事がやりにくくて仕方がない。

 庭の手入れをしているとすぐに駆けつけてきて、力仕事を全て取られてしまうのだ。

 昔の自分であれば、そんなことをする必要はなかったかもしれない。でも今は、仕事をして金を稼いで生活をしているのだ。

 ゼクスよりはるかに身分の低い人間なのに、なぜゼクスがあそこまでしたがるのか…。もう自分は何も出来ない子どもではない。

 手を出される方が迷惑だ。

 しかし、それを強く言えない自分も自分だ。はっきり言って、ゼクスには理解してもらわないといけない。

 庭師の仕事を辞めるのは、今の生活には痛手になる。ゼクスに納得してもらおう。

 綺麗な星空を見ているはずなのに、それを綺麗だと思えない自分が悲しくなる。

 ノアルは窓を開けたまま、ベッドにゴロリと横になると手を頭の下に置いた。今日は下の店を手伝う気にもなれない。

 イブの視線が痛いし、ローラとの接し方にも緊張して疲れる。

 一つのことが上手くいかなくなると、全ての調子が狂ってしまう。今まで順調にいっていたことが、嘘みたいだ。

 いつも通りにやっているはずなのに、どこか歯車が合わない。上手く立ち回ろうとすれば、思いばかりが先走り、結局上手くいかない。
< 32 / 266 >

この作品をシェア

pagetop