春待つ花のように
 マリナとも会っていない。

 別荘で仕事をしているときは部屋に閉じこもっているようで、顔を合わすこともなかった。

 会えない…そう思うと、彼女への想いはさらに強くなる。好きなのに、好きだと言えない。

 触れたいのに、触れようと思えばレイの顔がチラつく。

 あの時、マリナの気持ちを聞かずに抱いてしまったほうが良かったのだろうか。彼女は自分に抱かれることを望んでいた。

 その通りに抱いてしまえば、自分も今のように悩んではいなかったのだろうか。

 しかし、彼女はレイのモノだ。将来は王妃になる女性だ。そんな女性を安易に抱いてしまうのはどうだろうか。

 一時の熱くなった感情で、彼女を抱き、その先にあるのは何だろうか。喜びか、快楽か、絶望か。

 彼女は話し相手が欲しいといった。きっと今の生活に何かしらの不満があるのだろう。

 別荘に閉じ込められ、屋敷の使用人はゼクスと数人のメイドだけ。メイドはほとんど彼女と口をきかない。

 ゼクスも必要最低限のことしか言わない。こんな生活なら、誰でも話し相手が欲しくなるだろう。

 レイだって週末にやっと別荘に来れる。長く入れても2日間。彼の性格を考えれば、マリナの話などを悠著に聞いてあげるような人間ではない。

 そんな生活の中に、話を聞いてくれる人間が現れた。しかもそれは男。彼女の希望通りの人が出現した。

 今の生活に不満があるのなら、なおさらその男に惹かれるだろう。
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