春待つ花のように
「いいんじゃない。部屋に戻らなくても…」

 この際、イブの企みにのってしまうのもいい、そう思ってしまうノアル。どうせマリナとは一緒になれないのだ。

 この寂びしさを、ローラに埋めてもらってもいいかもしれない。

 ノアルは立ち上がると、体が硬直しているローラの手を握る。

「おいで」

 ノアルは彼女の手を引っ張り、ベッドのほうに体を引き寄せた。











「ノアル様…」

 花壇の作業をしている後ろからゼクスの声が聞こえてくると、さっと立ち上がった。

「ゼクス様、お話があります」

「何でしょう、ノアル様」

 嬉しそうな顔をするゼクス。何か言いつけられるのを待っているような気さえしてくる。

 ノアルは『何でもありません』と言いたくなる気持ちをぐっと抑えて、真剣な表情をした。

「私はスラム出身の庭師です」

「はい」

「だから、昔のことは忘れてください」

「そういうわけにはいきません」

「どうして?」

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