春待つ花のように
「私は貴方様にとてもお世話になりました。まだ幼くて覚えてないかもしれませんが…」

「覚えています。父上が大切にしいていた花瓶のことでしょ? しかし、昔は昔。父上は死に、母上とも別れ、スラムで生活をしています。そのような人間とゼクス様の今の地位と…考えれば、自ずとゼクス様のとる行動は決まるのではありませんか?」

 ノアルが全てを言い終わる前に、ゼクスの目には涙がみるみる溜まっていく。

 その涙を見たノアルは、少し驚いた表情をした。こんなことで彼に泣かれるとは思わなかった。

「あんなことがあっても曲がることなくご成長されたのですね」
 
ゼクスはズボンのポケットからハンカチを取り出すと、涙を拭いていく。

「だから…」

「ええ、わかっています。でも、私はどんなことがあってもノアル様のお味方ですからね」

 そう言うとゼクスと、鼻をすすりながら建物の中へと入っていった。
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