春待つ花のように
「マリナ、庭でも散歩しようか。庭師が綺麗にしてくれた。散歩するのに丁度いいだろう」

 レイはマリナの背中に手をまわすと庭に向かった。

 庭が綺麗なのは知っている。ノアルが毎日丁寧に手入れをしているのだ。

 彼が来るまで誰も手入れをしておらず、荒れ果てた庭だった。それを見たノアルが一からやってくれたのだ。

 土を柔らかくして、花を街中で探してきて植え替えてくれた。ずっと見ていた。2階の部屋からずっと彼だけを見てきた。

「どうだ、綺麗だろ?」

 レイが誇らしげに言う。自分が手入れをしたわけでもないのに。ノアルだったら絶対に自分のしたことを人に自慢するようなことはしない。

「ええ、とても。心が洗われるようです」

「だろ? 俺があの庭師を見つけたんだ」

「え?」

「城の庭を一生懸命手入れしていたんだ、奴は。プロの庭師でもないのに、見よう見真似でどんどん上達して…だから奴の実力を見込んでここに呼んだ」

 どうだ、俺はすごいだろ。そう言わんばかりの口調でレイは話す。

 人を見る目だけはある。ノアルを別荘の庭師にしてくれたことは感謝しなくてはならないようだ。
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