春待つ花のように
「彼ら?」

 ローラの問いに棚の引き出しを開けたまま着替えていたノアルの手が一瞬止まった。

「あ、ほら。別荘にいる人たち」

 苦笑いをするノアル。別にレイに女がいることを隠す必要はないのに、なぜかローラには言えなかった。

 そこにやましい想いが自分にあるからだろう。

 着替えが終わると、ベッドに片膝を乗せてローラとキスをする。彼女は嬉しそうに微笑むと、ベッドから出ようとする。

「ローラはまだ寝てろよ」

「でも…」

「いいよ。昨日も無理をさせたみたいだし、俺なら平気だよ」

 ノアルの言葉にローラは顔を真っ赤にする。昨日の夜のことを思いだすだけで、恥ずかしくなってしまう。

「今日は別荘の仕事が終わったら、一度ここに戻るつもりでいるんだ。朝食はその時に食べるから」

「わかった。待ってる」

 ノアルはローラに微笑むと、部屋を出て行った。

 これで本当に良かったのだろうか。一人になるとそんなことを考えてしまう。
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