春待つ花のように
「私の話を聞いてくれる?」

 食堂の窓が開くと同時に、マリナの声が耳に入ってきた。

 久しぶりの彼女の声に、すぐにでも振り返りたい気分だった。

「仕事中だから」

 冷たく言うノアル。これが精一杯の言葉だった。

 彼女に会ったら…彼女の顔を見てしまったら、今まで我慢してきた気持ちが張り裂けてしまいそうだ。

 ローラを裏切るわけにはいかない。彼女も大切な人だ。彼女は自分を愛してくれている。そんなローラを悲しませるようなことはしてはいけないのだ。

「お願い聞いて。作業しながらでいいから」

 マリナは必死な声で言う。何かを決意した、という感じもする。

「私、私ね。貴方が好きなの。こんなこと言ってはいけないとわかってる。でもこの気持ちは止められない。どんどん貴方を好きになっていくの。ごめんなさい。こんなことを言っても困るのは貴方なのに…」

 雑草を抜く手を止めると、ノアルはマリナの方に振り返る。彼女の方からそんな言葉を聞けるなんて思ってもみなかった。
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