春待つ花のように
「覚えてない…。両親のことは全然、物心がつく前からスラムで生活してたから」

 『そっか』と小さく頷くノアル。

スラムにいる子どもたちは大抵、そんなものだろう。産んで見たものの、生活が困難になり、幼いうちから子どもたちを捨ててしまう親。

捨てるならお金にしてしまおうと、売ってしまう親。この街にはいろいろな人間がいる。

 貴族たちの生活とはまるで天と地の差がある。貴族たちの男は沢山の女性に手を出し、自分の子を産ませる。

女の数や子どもの数、それによって出来る男とそうでない男が決まる。たいして魅力のない男でも、財力があれば女は集まり、男は優越感を味わえる。人として薄っぺらい人生だ。

 毎日のお金や食事のことなど考えることなく、男女の駆け引きばかりを楽しんでいる。それが人生の全てであるかのように。

 スラムでは男女の駆け引きなんかより、どう生きるかが毎日の生活に欠かせない考えだ。

一歩間違えれば、犯罪に手を染めて生活をしなくてはならなくなる。女性なら、遊女として男に遊ばれてしまうことだってある。
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