春待つ花のように
 気がつけばこのスラムにはノアルがいないとここでの生活がまわらない、という風になっていた。

「あいつ、とんでもないとこの馬車を持ってきた」

 ノアルは仁王立ちすると口をへの字に曲げた。ローラはノアルの言っている意味はわからず、首をかしげた。

 馬車に乗っているのだから、金を持っている貴族だろうとは思っていたが、ここまで地位の高い人間だったとはノアルの困ってしまう。だからといって返さないわけにもいかない。

「これはレイ・クライシスの持ち物だ」

 ノアルはそうローラに告げると、そのまま自分の家に入っていく。ローラは彼の言葉を聞くなり、瞳を大きく開けて驚いた表情になった。

「これ、王の息子の?」










 ノアルは三階の自室に戻るとベッドに片足を乗っけて、窓を開ける。さわやかな風が部屋の中に入ってくる。

 上着を脱ぐと、木製の椅子に投げた。続けてシャツにズボンを脱ぐと、ベッドの隣にある棚の引き出しを引っ張った。
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