春待つ花のように
 噴水を境にして貴族と平民たちの区切りが出来ている。

噴水より南は貴族の屋敷が続き、その果てにはレイがいる宮殿とぶつかる。噴水より北にいけばいく程、人々の暮らしは貧しくなる。

 カインたちはその噴水より少し北にある薬屋にいるようだった。

 ノアルは建物の入り口の前に立つとノックをした。とくに返事は無い。薬屋だし、客を装って中に入るのもいいだろうと、彼はドアをゆっくり開けた。

 ノアルはドアを開けると驚いた表情になった。本当に薬屋なのだろうか。そう思ってしまうほど、部屋は閑散としていた。

会計のときに使うのか、だだっ広い部屋に棚が一つ置いてあるだけだった。そこに人は立っていない。

 ここは本当に営業をしているのだろうか。そしてここにカインたちはいるのだろうか。ノアルは不安になる。

「あ、すみません。店番の奴が買い物に出てまして…」

 一人の男が2階から階段を使って降りてきた。ノアルはその男と目が合うと、瞳を大きく開けた。
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