春待つ花のように
「アンジェラ、ノアル様に失礼ですよ」

 ミゲルは怖い顔でアンジェラに言う。彼女はノアルから離れると落とした紙袋を拾った。

「そんな所で床と睨めっこしているミゲルのほうが失礼よ。邪魔だから、退いてくれる?」

 アンジェラはミゲルを睨むと、細く長い足でミゲルの体を押した。ミゲルは渋々立ち上がると、部屋の端に移動する。

「ノアル様、2階で話をしましょ。こいつじゃ、話が進まないでしょ?」

 アンジェラは笑顔で言うと、2階に行く階段を指で指した。『全くだ』そう頷きたくなるが、それはちょっとミゲルに悪い気がするノアル。

 苦笑いをすると、ノアルは階段に向かい歩き出した。

「『こいつ』とは何ですか!」

 ミゲルが不機嫌そうに言う。

「医学書と礼儀にしか興味のない奴は『こいつ』で充分よ」

「何ですか? 誰のおかげでここでの生活出来ていると思っているんですか」

「私だって、稼ごうと思えば稼げるのよ! この美貌と体があれば、ミゲルより稼げると思うけど?」

 アンジェラは上着を少しずらして素肌をミゲルに見せ付ける。

 彼女の肌を見たミゲルは顔を真っ赤にすると彼女から顔を背けてメガネをかけなおした。
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