春待つ花のように
「そう、なら上に一緒に上がってきなさいよ」

 ノアルはローラの手を握ると一緒に2階に上がっていった。

 先ほどまで座っていたところに腰を下ろすと、ローラも隣に座った。椅子もなく、クッションもない。ただ冷たい床に座った。

 アンジェラは新しいコップを棚から出すと、お茶をいれて、ローラの膝の前に置いた。お茶をもらったローラは軽く頭を下げる。

「スラムの子?」

「ああ。一緒に生活をしている」

 ノアルの言葉にローラは顔を赤らめる。

「さて、本題に入ってもいいのかしら?」

 急にアンジェラの声のトーンが下がる。

 ローラは驚いて、彼女の顔を見つめた。さっきまであった温かい雰囲気は一気に消えうせていた。

「ああ。昔話をするために来た訳じゃない」

「そうね」

 ローラは驚いた。ノアルも目の前にいる女性同じように、鋭い目つきになっていたから。
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