春待つ花のように
「母上はなぜ死んだのだ?」

 真剣な表情でノアルは彼女に問う。

「詳しい経緯は私たちもわからないの。ゼクスが別荘でレイが話しているのを聞いたってだけで…カイン達が情報を集めようと宮殿の人たちに聞いてもテーラ様がいたことさえ知らないみたいで…」

「それで俺の力が欲しいと?」

 アンジェラは頷く。ノアルはため息をつくと、座っている足を崩した。

「カインたちが調べてわからないことを俺一人の力で解決するわけないだろう」

 ノアルの言葉にアンジェラは肩を落とす。テーラのことを話したら、自分たちと一緒に動いてくれると思っていた。

 しかし彼は乗り気ではない。10年前もそうだった。テーラと同じように、復讐はするべきではない、と自分たちを諭そうとしていた。

 愛する母がロマに殺されたとなれば、絶対にノアルは怒ると思った。そして復讐に加わってくれると思ったのに。無理なのだろうか。

「ノアル様ならきっとテーラ様のことを調べられると…」

「確かに母がロマにどのような扱いを受けたのかは知りたいと思う。しかし…死んだものは何をしてももう戻らないのだ。復讐はするな」
< 74 / 266 >

この作品をシェア

pagetop