春待つ花のように
「私なんかに気を使うことはないですよ。殺されるのはちょっと嫌ですけど…薬屋でその…」

「ノアル様と約束をしました。貴方を丁重に扱うと…」

 カインは優しく微笑む。
「丁重…ね。カインさんはそれで疲れない? 大丈夫?」

 ローラはカインの前に座ると、彼の顔を覗きこんだ。カインは何事かとパンを持ったまま、体を後ろにひいた。

「私ね、人の顔色を見て行動するのが得意なの。幼いころ、スラムで生活するためにはそれが必要で、他人に気を使ってばかりいたの。だから、その大変さがわかるっていうか…相手を気遣いながら接する人を見ていると、少しでも気を抜けるところを作ってあげたいって思っちゃうの…」

 ローラの真剣な眼差しが、何だか可愛く思えてくるカイン。軽く口元を緩めると、彼女の目を見つめた。

「ノアル様はそこに惚れたんですかね」

 カインの言葉にローラの表情は曇った。
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