春待つ花のように
 それを抑えるために、カインは四六時中ローラを見張り、彼らの不安を解消しているのだ。

「ここは、スラムが近いのですね」

 ローラはたいして開かない窓から外を眺める。スラムの子どもたちの声が時折聞こえてきた。

「あまり上流階級の近くで生活するのは厳しいものがありますから。ここの他にもいくつか部屋は借りているんです。拠点はあの薬屋ですが…、仲間たちにもそれぞれに生活はありますから」

 カインはパンをかじる。薬屋では仲間たちの出入りが激しい。

 ローラがいることを疎ましく思っている人もいる。そんな人の目を気にする彼女がとても不憫に思い、カインがここに連れてきたのだった。

 ここなら、彼女のことを悪く言う人はあまり来ないであろう。この部屋は普段からカインが生活するのに使っているものだからだ。

「カインさんは大変ですね」

 ローラは彼に振りかえると笑顔で言った。

「え?」

 カインは彼女の言葉に驚いた表情をする。
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