春待つ花のように
 狭い部屋にベッドと棚と椅子が置いてある。カインはドアの近くで足を止めると、ノアルはその横を通り過ぎ、ベッドに腰を下ろした。

「どうしてローラを?」

 ノアルは真っ直ぐにカインを見つめると口を開いた。当然の質問だろう。自分たちのことを知りすぎた彼女。

 外に知られないために『預かる』という形をとったのに、事を動かす前から彼女を自由にするのは誰もが疑問に思うことだろう。

「彼女のことはノアル様にお任せしようと思いました」

「俺はまだ答えを出してないぞ」

「はい。よいお返事を待っています」

 カインは軽く頭を下げる。ノアルは足を組むと、視線を逸らした。

「何を企んでいる」

「何も」

「ここにローラを連れてきたということは何か意図があってのことだろ?」

「丁重にお預かりするお約束が守れそうになくなったので、お返しにあがりました。ただそれだけのことです」

 彼の言葉にノアルは勢いよく顔をあげた。
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