春待つ花のように
「動くのか?」

「お教えすることは出来ません。よい返事を待っています」

 カインは深々と一礼をすると、ノアルとは目を合わせずに部屋を出て行った。




 彼の表情を見てしまえば、足を止めてしまうだろう。そしたら、ノアルはきっと『復讐してはいけない』とそう諭すに決まっている。

 復讐することが、いかに愚かな人間に成り下がるか知っている。わかっていてもこの気持ちは抑えられない。

 自分の人生は十年前で終わっているのだ。ロマによって幸せな未来は消された。

 カインが階段から降りてくると、店のカウンターに座っていたローラが顔を上げた。店内を見渡すと、先ほどまで怒っていたイブはいないようだ。

 ホッと安心すると、彼女に微笑んだ。

「さっきはごめんなさい」

 椅子から腰をあげて立ち上がるとローラは頭を下げた。イブに叩かれたことを言っているのだろうか。カインは首を横に振ると、彼女の肩を触った。

< 100 / 266 >

この作品をシェア

pagetop