落ちこぼれの恋愛事情。
「っ…!!」
…どうやらうなされていたようで。
「…はぁ」
昔の夢を見てしまっていた。
あぁ、と思う。
まだ、逃げられていない。
額に浮かんだ汗をぬぐう。
大きく息を吐けば、いくらか気分は落ち着いた。
「真城様、おはようございます」
襖の向こうから声がした。
彼女は新人の使用人の裕璃だったはずだ。
「おはようございます、裕璃さん。
朝ごはんですよね?
今行きます」
僕は布団から出て、
衣装だんすを開きながら言った。
…この口調が、今は大分板についてきていた。
「…あ、あの、」
「どうしたのですか、裕璃さん?」
まだ裕璃が襖を挟んだ廊下で、
とまどっているらしい。