落ちこぼれの恋愛事情。
「…まだ覚えて無かったのか」
デスクの前に座った私に、同期の高木春司は呆れた声で言った。
高木は物覚えが早く、
今や課長の右腕と言っても過言ではない。
そのサバサバした性格も、みんなに好かれている。
「…ごめん。」
「ほら、ソフト開け。
教えてやるから…」
そう言って、後ろから高木が手を出し、
私がホールドしていたマウスを上から握った。
そして
それをそのまま操作する。
…近くね?
「高木さん」
「ん?」
少し困っていたら、後ろから涼やかな声。
同じく同期の、桑原真城だった。
都内の名門大学の出で、穏やかな男だ。
「いささか…近すぎやしませんか?
彩夏さんが困っていらっしゃいますよ」