揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「ひろと…君?」


胸から顔を離し、不思議そうな顔で私を見ている。

私は…そんな先輩から目を逸らしてしまった。


「もしかして、彼氏も≪ひろと≫って名前?」


先輩の目を見れないまま、私は小さく頷き返した。


次の瞬間、私の中から指が抜かれ。

さっきまでの痛みが、一気に和らいだ。


「そういう事か……」


独り言のように小さく呟くと、先輩は私の上から身体を離し。

ドサッと音を立てて、私の隣に横になった。


「……?」


どうしたのかと先輩の方に視線を向けると、身体を横にした先輩もこっちを見ていて。

真っ直ぐな視線に捕えられ、胸がドキッと大きく弾んだ。


だけどそれは、先輩の整った顔にときめいたからとかじゃなくて。


後ろめたい心を…全部見透かされてしまったような気がしたからなんだ。


「今まで呼んでた名前は、全部彼氏の事だったの?」


ストレートな質問に、再び疚しさから視線をずらしてしまう。


「ごめん…なさい」


それが、今の私の精一杯の謝罪だった。


先輩の優しさに甘えてしまった事。

先輩と大翔君を重ねてしまった事。


許される事じゃないって分かってる。

だけど、気付いてしまったんだ……。


こんな目に遭ったって、私が好きなのは大翔君だけなんだって。
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