揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「ちょっと訳があって、クラスの女の子をケガさせてしまって。その時に頭を打ったみたいで記憶を失くしてて、俺を彼氏だって思ってるんだ」


「えっ?何で大翔を……?」


「ケガする直前に告られたんだよ、その子に。だから、記憶が曖昧になってるみたいでさ」


いわゆる記憶喪失って事なんだよね……?

そんなのって、マンガやドラマの世界の話だって思ってたんだけど。


まさか、こんな身近で起こるだなんて。

しかも…大翔君の事を彼氏って思い込んでるって。


やっと穏やかになりつつあった胸が、またザワザワと騒ぎ出す。


「病院の先生や向こうの両親にも頼まれて、彼氏のフリをする事になったんだ。もちろん断ったんだけど、何度も頼まれたし…まどかさんがやるように強く言ってきてさ」


「まどかさんが?でも、大翔の事を好きだったら反対するんじゃないの?」


そう尋ねると、彼は私からゆっくりと体を離し。

両腕は掴んだまま、少し悲しそうに私を見てきた。


「俺が、その子を好きにならないって分かってるから。俺が本当に好きなのは由佳だって分かってるから、まどかさんはその子とつき合うのを勧めてくるんだ」


大翔君が私を好きでいてくれる事を分かってるなら、なんで私に彼女のままでいていいって言ったんだろうか?

どうして、はっきり別れてくれって言わなかったんだろう?


まどかさんに会った時の事を、ふと思い出していた。

急に黙り込んだ私を大翔君が心配そうに覗きこんでくる。
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