冬うらら 1.5

「あ…」

 メイも、何を待っているのか分かったのだろう。

 毛布の隙間から、白い腕を出してきた。

「きゃっ」

 両手を出そうとしたものだから、毛布が落ちそうになって、メイは慌てて押さえる。

 今度は、脇で毛布を押さえるようにしながら、両手を出してきた。

 そう。

 ネクタイは、まだ蛇のまま、ぶらんと首にぶら下がっていたのだから。

 きゅっ。

 彼女の指先が喉元まで上がってきて、ネクタイはきちんと所定の位置に納まった。

「はい……気をつけて…今日は、ごめんな…」

 メイが、いろいろ言おうとしている。

 しかも、また謝ろうとしている。

 カイトは、ばっと彼女の方をきちんと向き直ると、強く唇を重ねた。

 聞きたくない言葉を飲み込むためだ。

「行ってくる」

 唇を離すなり、身を翻してカイトは部屋を出ていった。


 あんまり早く出過ぎて―― 行ってらっしゃいさえ聞くことが出来なくて、カイトはすごく損をした気分を味あわされたのだった。
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