冬うらら 1.5
●21
 失敗しちゃった…。

 結婚翌日―― もう、一体どれが初夜でそうでないんだか、分からなくなってしまっているが、正式な法律上の翌日―― メイは、見事に寝坊してしまった。

 そして、ベッドからカイトを、見送ることになってしまったのである。

 会社に遅刻しなければいいのだが、遅刻すまいと急いで事故なんかにあっては大変だ。

 何事もないように願いながら、彼女は毛布にくるまったままベッドから降りた。

 昨日は、結局カイトにベッドまで連れてこられてしまったので、何の着替えもベッドの側にはなかったのである。

 せっかくだから、このままもう一度、シャワーを浴びようと思ったのだ。

 脱衣所で毛布を落とそうとしたら、洗面所の下が濡れているのに気づいた。

 カイトが、慌てて顔を洗っていったせいだろう。

 メイは、その後始末を最初にした。

 クスッと、ちょっと笑いながら。

 生活する、という点については、彼にはいくつも欠点があった。

 そういうものが見えると、何となく嬉しいのと親近感がわくのと、可愛いとさえ思える。

 結婚した今、親近感がわく、などという表現を使うのは、すごく変な感じがするのだが、それ以外にぴったりくる言葉がないのだから仕方がない。

 お互いのことを空気のように思える日が、いつか来るのだろうか。

 メイは、ぽつっと考えたけれども、まだ随分先のことのように思えた。

 そうなっている2人の姿というのは、いまの彼女には想像できなかったのである。

 床を拭いてしまった後、毛布をはらりと脱いだ。

 途端、部屋よりも低い気温に身震いを覚える。

 早く、温かいお湯で身体を流そうと、足を踏み出した時。


「きゃー!!!!!!!!」


 メイは―― また悲鳴を上げてしまった。

 今日3度目の悲鳴である。

 1番目は、寝坊したこと。

 2番目は、全裸でベッドから出ようとした自分に気づいたこと。

 そして、3番目は。

 自分の身体中に。

 たくさんの赤い跡が見えたこと。

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