冬うらら 1.5

 ダイニングの席で、おいしいおやつを味わう。

 お茶とケーキと女2人というパターンがあれば、次に来るのは『おしゃべり』と相場が決まっていた。

 にこやかなハルコは。

「それで…カイト君の様子はどう?」

 どう―― と聞かれても。

 ハルコの質問の枠が大きすぎて、メイはどう答えていいか分からなかった。

「結婚してから、何か変わったかしら?」

 彼女が質問に困っていると分かったのだろう。具体的な内容に切り替わった。

 ああ、それなら。

 メイは、変わった部分を思い出そうとした。

 が。

 きゃー!!!!

 彼女は心の中で悲鳴をあげた。今日は悲鳴だらけだ。

 どれもこれも、思い出すもの全部が、ハルコに答えられないようなものばかりだったのである。

 走馬燈のように。とんでもない記憶ばかりが頭の中を駆け抜けて、全身が火を吹いた。

「え、あの…その……」

 言葉も思い切りどもってしまって。

 これでは、ハルコに誤解してくれというようなものである。

 しかも、いまは彼女の目の前でお茶というシチュエーションなのだから、自分の顔の赤さや表情を隠す、なんてことは不可能だった。

「あら…幸せそうね」

 おかげで。

 にっこり微笑みながら、そんなことを言われてしまった。

 ああ。

 恥ずかしさに、穴があったら入りたかった。

 このままでは、もっと恥ずかしい質問が繰り出されるのではないかと、メイがオロオロし始めた時。

 来客を告げるチャイムが鳴った。

「あら、お客様?」

 ハルコが彼女の表情を伺う。

 そんな予定はなかった。

 メイは、立ち上がって玄関まで向かう。

 結果的に、ハルコの視線から逃げられたので、ちょっとほっとした。

「どちらさまですか?」

 ドアごしに聞く。

「○×ガスです! ガス工事に来ました」

 ガス工事??????


 予想外のお客に、メイは面食らってしまった。
< 93 / 102 >

この作品をシェア

pagetop