冬うらら 1.5
◎22
 あら、まぁ。

 メイを見た瞬間、ハルコはそんな風に呟いた。

 表面上は普通の顔をしていたが、本当はかなり驚いていたのだ。

 きらきらきらきら。

 何というか、彼女は『幸せ』という金粉でまぶされていて、一目で分かるほど輝いていたのだ。

 内側からあふれ出す気持ちを押さえきれないように、笑顔も仕草も、月曜日からすると何もかもが違っていた。

 肌のツヤさえ、違うように思える。

 本当に、ぴかぴかしていた。

 これは…。

 内心で、ハルコは笑みをこぼしてしまう。

 幸せに違いなかった。わずか2日間の結婚期間が、こんなにまで彼女を変えてしまっているのだから。

 女を、これほど変える力が彼にあったなんて、信じにくいことであるが、こうして現物が目の前にあるのだ。疑うワケにはいかない。

 まだ見ていないが、カイトもどれほど変わったか―― ひどく楽しみになってしまう瞬間だ。

 こんなに素直に、表に出るメイほどではないだろうが、彼もきっと男っぷりを上げたに違いなかった。

 いま仕事をしている夫に、すごくいい報告が出来そうだと分かって、ハルコはにこにこしてしまう。

 お茶もケーキもおいしくて、彼女の笑顔は上塗りされていくだけだった。

 しかし、きっとソウマは、その報告だけでは喜ばないだろう。

 実は。

 今日、ハルコがここを訪問すると言った時、一瞬眉を顰めたのだ。

 要するに。

 ズルい、と言いたいらしい。

 ソウマも、この家を訪問したくてしょうがないのだが、仕事があるし。

 さすがに、新婚家庭の夜に押し掛けるワケにはいかないと、多少は遠慮しているらしいのだ。

 それなのに、いくらカイトのいない昼間とは言え、ハルコだけが訪問するというのは不公平だと思ったのだろう。

『ちゃんと、おみやげはもらってくるから』

 そうやって、なだめて抜け駆けしてきたのである。
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