冬うらら 1.5

 この場合のおみやげとは、『みやげ話』の方だった。

 どんなものよりも、それをソウマが喜ぶのは知っていたのだ。

 カイトと彼女がうまくいくことを、彼らは誰よりも心配していたのである。

 だから、その後の幸せな話を、聞く権利はあったし―― 何より、聞きたかった。

 あのカイトが。

 メイが絡むと、カイトのことを言う時に必ずそんな単語が頭につく。

 あのカイトが、信じられないことを数々やらかすのである。いつまでも、彼女のネタであればからかうことが出来るのだ。

 それはもう、楽しくて嬉しいのだが、何より信じられない出来事でもあった。

 こんな日が訪れるなんて。

 好きな女一人で、ここまで彼が変わったのだ。すごい影響力である。

 しかし、本人はまったくそんな自覚もなさそうな笑顔で、おいしそうにケーキを食べている。

 過去のカイトを知らないのだから、本当に自覚していないのかもしれなかった。

「それで…カイト君の様子はどう?」

 しかし、メイしか知らない彼の顔もたくさんあるはずだった。

 きっとソウマ夫婦の前よりも、かなりのウカツと持て余す気持ちを山積みにしているに違いない。

 それのお裾分けをもらおうと思ったのだ。

 その問いに、彼女はフォークを持ったまま困った顔になった。

 どうやら、質問が広すぎたようである。

 ハルコの方としても、『元気ですよ』などという返事が聞きたいワケではないのだ。

「結婚してから、何か変わったかしら?」

 これなら、理解出来るだろう。

 こんなにも、カイトは彼女を輝かせてしまったのだ。

 2日の間に、一体どういう風な気持ちと態度をぶつけたら、こうなってしまうのか―― 興味は尽きなかった。
< 95 / 102 >

この作品をシェア

pagetop