冬うらら 1.5

「え、あの…その……」

 一瞬面食らった顔が、かぁっと真っ赤になった。

 多分、かなりいろんなことを思い出してしまったのだろう。

 一体何を!

 ハルコは、もう本当に吹き出すのをこらえるのが大変だった。

 彼女が、あまりに素直だったこともだが、赤面して言葉を失うしかないようなことを、あのカイトがいろいろしたのかと思うと、おかしくてたまらなかったのだ。

 しかし、ぐっとこらえる。

 でないと、メイが警戒して、だんまりになってしまうかもしれないのだ。

「あら…幸せそうね」

 さりげなく、当たり障りのない決着をつけてやりながらも―― しかし、にっこりは深々と彼女の唇からこぼれてしまった。

 こらえきれなかった破片だ。

 お茶もケーキもまだある。

 時間は、まだたくさんあるのだ。

 ゆっくり話を聞いても大丈夫なはずだった。

 なのに来客を告げるチャイムが、彼女の邪魔をした。

 首をひねりながらメイが玄関に出ていく。

 セールスかしら?

 そう思いかけたハルコは、『もしかしてソウマが来たんじゃ!』という疑惑が一瞬よぎり、そうして拭いきれなかった。

 我慢できなかったのかしら、と思っていると。

 それは、すぐに濡れ衣であることが分かった。

 ツナギに工具箱を持った男の二人組を連れて、戸惑った顔のメイが帰ってきたからである。

 青いツナギには『○×ガス』と書いてあった。

「あら? ガスの点検?」

 ハルコは、夫の登場でなかったの拍子抜けしながらそう聞いた。

 しかし、メイが困惑した顔をしている。

「いえ、違います。ガス給湯器の工事です」

 青いツナギの片方。

 年輩の方がよどみない口調で答えると、奥の調理場の方に入って行った。

 給湯器の工事?

 ハルコは怪訝な目のまま、メイを見る。彼女も首を傾げている。
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