愛かわらずな毎日が。
「ごちそうさまでした」
両手をあわせ、私に向かってそう言ってくれた福元さんの姿を目にしたら、
もう少し。
あと少しでいいから一緒に居たい。
そんな想いがゆっくりと浮かび上がってきた。
「こんな時間ですけど、よかったらコーヒー飲みませんか?……食後の、コーヒー」
そうすれば、もう少しだけ一緒に居られる。
そんな私のワガママを、福元さんは、
「お願いしてもいい?」
と、笑顔で受け止めてくれた。
「はいっ。……あ。今日もホットでよかったですか?」
「うん。ホットで」
「ちょっと、待っててくださいね」
私はそう言うと、部屋の隅にある給湯室へ急いで向かった。
前に一度だけ淹れたことがあったのだけれど、そのときに福元さんが言っていた。
夏でもホット派なんだよね、って。
沸かしたお湯をカップに注げば、ゆっくりと立ち昇る湯気とともにコーヒーのほろ苦い香りが辺りに漂う。
私はそれを、胸いっぱいに吸い込んだ。
福元さんとふたりきり。
そんな緊張から一瞬だけ解放される。
「間宮さん、悪いんだけどさ」
突然そう声をかけられ、心臓がドクンと跳ねる。
「は…、はいっ」
声のした方を見ると、福元さんが給湯室の入口に立っていた。
「砂糖って、ある?」
「えっ?砂糖?ブラックじゃないんですか?」
「うん。今日は、甘いのが飲みたい気分」
「あ。そうなんですね」
私はスティックシュガーがしまってある棚に手を伸ばし、お疲れなんですね、と付け足した。