愛かわらずな毎日が。

一瞬、キョトンとした表情をした福元さんだったけれど。


「それはちょっと、大げさ…じゃない?」

なんて。

軽く握った拳を口元に置き、コホッと小さく咳をした。


………あれ?


もしかして。

もしかすると。


照れてたり、する……?


「……ぅわぁ」

思わず漏らしてしまった声に福元さんが反応する。

「……え、…なに?」


「あ……、いいえ。なんでもないです。ふふっ。ごめ、……あっ、……すみません」


だって。

福元さんの照れた表情を見るのは、はじめてだったから。

胸の奥がくすぐったくなって。

なんだか特別なものを見せてもらった気分になって、うれしかった。


福元さんはコホンと咳払いをすると、何事もなかったかのような顔をして、手にしていたサンドイッチをパクリと食べた。


「あ……」


「えっ?」

今度はなにかな、と小首を傾げた福元さん。


「ちゃんと、食べてる」


「………ん?」


「サンドイッチに挟んである、レタスです」

私がそう言うと、福元さんは不思議そうな表情で自分の手元に視線を落とす。


「嫌いじゃないから」


「……しなびてても、ですか?」


「うん。まぁ……。普通に食べるけど。……え。だめ?」


「いいえ。だめじゃないです」

思わず満面の笑みで言ってしまった。


『待ってるだけじゃダメですよ。ボーッとしてると、いつの間にかコレ』


森下によってつまみ出されたしなびたレタス。

それと一緒にされた私は、福元さんの言葉を素直によろこんでしまった。

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