愛かわらずな毎日が。
「おまえは営業所が長かったから知らないだろうけど。井沢がさ、何かと間宮さんに食ってかかるんだよ。
同期だから、ってのもあるんだろうけど。
それだけじゃない気もするんだよなぁ」
なんて。
揺さぶりをかけたのは、福元を困らせたかったからじゃない。
背中を押してやった、とでも言うのかな。
せっかく一歩踏み出すことができたんだから、立ち止まったりせずに進めばいい。
恐れず、前に進めばいいんだよ。
「福元って、甘いもの食べるよな?」
「……え?あ、うん。まぁ」
「んじゃ、やるよ。間宮さんがくれたんだ」
間宮さんに分けてもらったチョコレートを福元の手のひらにのせた。
「…………」
個別に包装されたチョコレートに視線を落とした福元。
スーパーやコンビニで簡単に手に入る、何てことないチョコレートがみっつ。
それを見て、30過ぎのいい歳したオッサンが笑みをこぼした。
どうせ、そのチョコレートをほお張る間宮さんでも想像したんだろ。
やっぱり、ただのエロじゃないか。
「福元ってさ、」
「うん?」
“間宮さんのことが好きなんだろ?”
喉まで出かかった言葉。
今は、言わないでおこう。
福元のことだから、いつ打ち明けてくれるかわからないけど。
気長に待つとするよ。
「福元部長は、今日も残業ですか?」
「多分ね」
「そっか。毎日、大変だな」
「ははは」
「疲れたときは甘いものが食べたくなるって、間宮さんが言ってた。
まぁ、それ食べて頑張りな」
「それはどうも」
「頑張れ、福元部長」
番外編『福元部長の恋愛事情』 完. 2015.7.2