愛かわらずな毎日が。
「えっ!?……あっ、……ちょっと待ってよ!
愛っ!?」
「…………あーぁ、行っちゃった」
「もー……。なんなの、あれ」
コピー機の前。
胸まで伸びた栗色の髪を揺らしながら福元部長のあとを追う愛を見つめる香織と森下。
「っていうか。間宮さんて、わかりやすい」
「……え?」
「何をお願いされたか知りませんけど。
あんなに食い意地の張ってる人が、有名店のロールケーキを放って行くんですよ?
そりゃもう、『福元部長のことが好き』って、
言ってるようなものですよ」
「あはは。たしかに」
森下が瞬きをするたび、彼女の長い睫毛が存在感を増していく。
香織はそれに視線を置いたまま、目を細めて笑った。
「香織さんは、もちろん聞いてますよね?」
「なにを?」
「なにを、……って。
福元さんが好き、とか。間宮さんからそういう報告は、」
「ううん。まだ」
香織が首を横に振ると、森下はこれでもかというくらいに目を丸くした。
「えっ!?ほんとですかっ!?」
「なによ。そんなに驚くことないじゃない」
「だって、」
「逐一報告し合う歳でもないし。それに。
あの子のタイミングもあるからね」
香織が首を右に傾けると、顎のラインで切り揃えた艶やかな髪がさらりと揺れた。
「本人から聞かされるまで、しばらくは知らないフリをしておこうと思って。
だから、森下も余計なことは言わないでよ」
「わかりました。言いませんし、訊きません。
いじりたい気持ちはあるけど、ガマンします。
………あ。やっぱムリかも」
「ほんと、やめてよね」
「あはは」