愛かわらずな毎日が。

「だって。あのふたりが、……って。考えただけで、なんかこう…、くすぐったいっていうか。
胸がキュンキュンしちゃってるわけですよ。
それなのに、知らんぷりなんかできるわけないじゃないですか」


森下の眉間に深く刻まれたシワを目にした香織は、ただただ苦笑いするしかなかった。


「あー…、うん。まぁ、あんたの気持ちもわからなくはないんだけど、さ」


「ですよね」


「…………」


さて困った、と香織の漏らした言葉は森下の耳には届いていないようだ。


「間宮さんが戻ってきたら、ちょっとだけ。
ちょっとだけ、つついてみません?」


いたずらっ子のような表情をした森下は、ニッと歯を見せて笑った。


「………え?」


「福元部長に何を頼まれたのか、って。それくらいのことは訊いても問題ないですよね?」


「……………」


「香織さんだって、訊きたいでしょ?知りたくないですか?」


「……………」


切ったケーキを皿にのせる香織の横で、目をキラキラと輝かせながら喋る森下。


香織は、もうなにも言うまいと、返事もせずに皿をトレーにのせはじめた。



「…………あ。」


「ん?どうかしました?」


「…………ケーキ。愛のぶん、忘れた」













番外編『香織と森下のナイショ話』 完. 2015.9.5

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