愛かわらずな毎日が。
再び包丁を手に取った香織が、森下をちらりと見た。
「なんですか?」
「あ。……うん。さっきも言ったんだけど、さ」
「はい」
「愛に、余計なこと言わないでよね。
ほら。あの子、恋愛に関してはあんたより不器用なところがあるから。
あれこれつつくとパニクる可能性大、なわけ。
だから、できればそっとしておいてほしいの」
ロールケーキに視線を置いていた香織がその視線の先を森下へと向ける。
そんなのわかってますよ、とでも言おうとしたのだろうか。
勢いよく息を吸い込んだ森下だったが、吐き出すはずの言葉をそのままのみ込んでしまった。
「なによ」
「……だって。香織さんは、できますか?」
「え?」
「ガマン。できるんですか?」
「…………」
黙り込んだ香織に向けて大きなため息を吐いてみせた森下が、長い睫毛に縁取られた大きな瞳で香織をジッと見つめる。
「私はガマンできません。っていうか、ガマンしたくないです。
間宮さんが戻ってきたとき、平常心でいられる自信がないし。なにより、あれこれ訊きたいし。つつきたいし、いじり倒したいです!」
「………森下。あんた、なに言ってんの?」