愛かわらずな毎日が。
香織がなにも言わないから、どんな表情をしているのか気になってそっと顔を上げた。
すると、呆れた表情をした香織が、
「話にならないわ」
と言って立ち上がった。
「…………香織?」
「確かめもしないで悩んでるなんて、バカみたい」
以前に比べ随分かかとの低くなった香織のパンプスが、コツコツと音を立てる。
扉が開けっ放しになっていたロッカーからバッグとカーデガンを取り出した香織が、
「ちゃんと本人に訊きなさいよ?相談にのるのはそれからよ」
そう言ったのだ。
できることならそうしたい。
「お見合いするの?」と、今すぐにでも問いつめたい。
だけど。
それができないから困ってるんじゃない。
悩んでるの。苦しんでるの。
「そんな簡単には、」
「遠慮することないじゃない」
「…………え?」
香織は首を少し右に傾けると、
「我慢しなくていいのよ。あんたは福元さんの彼女なんだから」
そう言って優しい表情で私を見る。
「…………カノ、ジョ」
「そう。カノジョ。だからね、福元さんが話してくれるまで待とうとか、そんな甘い考えはやめてね」
更衣室のドアノブに手をかけた香織は、
「よからぬ妄想ばかりしてないで、少しは福元さんを信じてあげなよ」
そう付け足すと、お先に、なんて手をヒラヒラさせて帰っていった。