愛かわらずな毎日が。
「………っ、」
驚いた拍子に勢いよく吸い込んだ空気が、体の中でみるみるうちに膨らんでいく。
一気に体温が上昇して、心臓はバクバクと音を立てる。
「かっ…、会社!……福元さんっ、ここ、会社の前だからっ」
会社の前、っていうか。ここ、オフィス街。
人目もはばからず、とか。
そういうの、気にしてないわけじゃないよね?
「ふっ…、福元さんっ」
福元さんは、モゾモゾと動く私の体を解放するどころか逆にきつく抱きしめる。
「俺も。顔が見たかったから」
「…………、」
「待っててくれて、嬉しかった」
「………ぁ、」
きゅん、と胸が鳴く。
やばい。
どうしよう。
なんだか、もう。
言葉を選ぶ余裕なんてなくて。
というよりも。
言葉なんて、ほうっと吐き出した息と、体じゅうの力が抜けていくのと同時にシュルシュルと抜けていってしまった。
会社の前だってわかってるのに。
「離れる」という選択肢が、もともと用意されていなかったみたいに。
福元さんから離れられない。