愛かわらずな毎日が。
「愛?」
会社から出てすぐに私の姿を見つけてくれた福元さんが、足早に私のもとへとやってきた。
「お疲れ様です」
福元さんを見上げてそう言うと、福元さんはためらいもせず、春の風に遊ばれる私の髪をそっと耳にかけてくれた。
「待っててくれたんだ」
「……だって、」
ドキドキと動きを速める心臓。
誰かに目撃されてしまうことを恐れて、というよりは。
単純に、ときめいてしまったのだ。
福元さんに。
福元さんのすべてに。
そのせいだろうか。
俯いた私は、福元さんの上着の裾を遠慮がちに掴み、
「顔が、……見たかったから」
そう口にしていた。
「そっか」
「……うん」
ふっ、と。
目の前の空気が揺れる音がして、再び視線を上へと移した。
福元さんは私と目が合うと、
「いつから待ってたの?」
「寒くなかった?」
と言葉を並べる。
だから私も、
「ちょっと前」
「寒くないですよ」
胸の奥をくすぐられているような感覚のなか、言葉を並べた。
すると、福元さんはゆっくりと目を細めた。
「……よかった」
「え?」
「待っててくれて。よかった」
そう言った福元さんが、やわらかな表情のまま左手だけで私を抱き寄せた。