愛かわらずな毎日が。

「正解は、池谷でした」

そう言うと、福元はグラスに口をつけたままフリーズしてしまった。


年度末恒例、営業部全員参加の飲み会のあと、二次会の誘いを断わって福元とふたりでとあるバーで飲み直していた。


つい先ほど耳にした会話の内容を、言うべきか。言わざるべきか。


もちろん。

俺は悩むことなく、「実はさ、」と包み隠さず報告した。



「で?どうすんの?」


「……どうする、って」

喉を鳴らしてビールを流し込んだあと、グラスを手にしたまま肩を竦めた福元は、

「愛ちゃん次第、ってことか」

俺のその言葉に対して否定も肯定もしなかった。


「堂々と交際宣言すればいいのに」


「ははっ。交際宣言、て」


「秘密にする意味がわからん。社内恋愛禁止、ってわけでもないのに」


「俺に気を遣ってくれてるんだよ」


「なんだ、それ」


「彼女なりの優しさ、ってやつ」


「そんな優しさはいらん」


「……なんでおまえがキレてんの」


「知らね」

< 262 / 320 >

この作品をシェア

pagetop