愛かわらずな毎日が。
「何から話せばいいのか、」
車を走らせる福元さんが、少し困ったような表情をして言った。
「………、」
声になれなかった息をそっと漏らした私は、視線を福元さんからフロントガラスの向こう側へと移動させた。
青く光る信号を見つめる私の心臓が、ドクドクと脈打っている。
知りたい気持ちは、もちろんある。
でも。
知らなければよかったと後悔することも、もちろんあるだろう。
そう考えると、何から訊いていいのかわからない。
そこから先の言葉を口にすることができない。
私は小さく咳払いをしたあと、膝の上で握りしめた手に視線を落とした。
正直に言うと。
福元さんの過去は、何度か想像したことがある。
カフェ、公園、映画館。
車の中で。あの部屋で。
どんなふうに笑って。
語り合って。見つめ合って。
触れて。触れられて。
どんな未来を思い描いたのか。
勝手に想像してた。
だけど。
そんな想像は、手で振り払えば簡単に消えてしまうような脆いものだったから。
いつも。いつだって。
少しばかりの嫉妬と一緒に振り払ってきた。
なのに。
あの人が現れたせいで。
ぼんやりとしていた輪郭を、くっきりと描けるようになってしまった。
福元さんの隣に並ぶ「過去」を、簡単に想像できるようになってしまった。
振り払うのもひと苦労なくらい、リアルに。