愛かわらずな毎日が。

今だってそうだ。

あの人も。この場所から福元さんのことを見つめていたんだよね、って。

そう考えただけで、くっきりと浮かび上がってくる。


助手席に座るあの人が、やわらかな表情をして福元さんを見つめているところ。


テレビ画面に映し出された映像を観ているというよりも、後部座席から眺めているような。

それくらいリアルに浮かび上がってくる。


あの人を目にしただけでこんなにも胸が痛むのだから、あの人の情報を耳に入れてしまったら、この胸の痛みはどれほどのものになるだろう。


あの人と福元さんの過去を知ってしまったら。

これから先、福元さんと過ごす時間の、ふとした瞬間に浮かんできてしまうに違いない。

私はそれを振り払うことも、消すこともできずに、自分と比較して。嫉妬して。

福元さんを困らせるくらい冷静さを欠いてしまうかもしれない。


「…………、」


そう考えると、言葉がのどにつっかえて。

次から次へとこみ上げてくるのに、つっかえてしまって。


熱くて。苦しい。


吐き出してしまえばラクになる。

でも。

吐き出して後悔したくはない。


知りたい。知りたくない。

その間で揺れる。


ゆらゆらと、揺れる。

< 288 / 320 >

この作品をシェア

pagetop