愛かわらずな毎日が。
「………福元さん、」
抱きしめられたまま福元さんの名前を呼ぶと、福元さんは呼吸をするみたいに、うん、と返事をした。
それは、とても静かに響いて。
短いけれど、私を包み込むように響いて。
胸が熱くなった。
福元さんの上着をきゅっと握った私が、ほぅっと息を吐き出すと、それに続くようにして言葉がこぼれ落ちる。
「金曜日の、あのひとと。
………付き合ってた、の?」
ゆっくり顔を上げると、私と目が合った福元さんが静かに頷いた。
だから、私も。
うん、うん、と頷いた。
知ってる。
知ってたよ。
すぐに気づいたよ。
そんなふうに頷いた。
私の髪をひと撫でした福元さんが、ゆっくりと口を開く。
あの日。佐伯さんが「レイカちゃん」と呼んだあの人のことを。
玲香さんのことを。
ゆっくりと。ときどき私の表情を見ては、一呼吸おいてから話してくれた。
私の心臓は、もちろんドキドキと動きを速めたままなのだけど。
福元さんがくれる情報を、まるでパズルのピースのようにひとつひとつ手に取っては組み立てていった。
福元さんが大切にしてきた玲香さんと、玲香さんとの時間。
当然のことながら、これっぽっちのピースでは完成しない。
それでも。
組み立てていくふたりの過去は、私の中でキラキラと輝く。