愛かわらずな毎日が。

友人の紹介で知り合ったという玲香さんは、福元さんよりも3つ年下で。

交際期間は約2年。


別れを切り出したのは、玲香さんのほうで。

別れてからは一度も会っていないという。


「だったら、どうして。
別れてから何年も経ってるのに、どうして今ごろになって会いに来るの?」


みつひろみたいに、結婚の報告でもしに来たの?

それとも。

真斗が言うように、福元さんのことが忘れられなくて……。


福元さんの胸に頬をぴったりつけた私の手に自然と力が入る。


「それは、」

福元さんが、ふぅっと息を吐き出す。

ため息に似たそれは私の髪を揺らして消えた。


私がゆっくりと顔を上げると、眉尻を下げた福元さんは、

「相談にのって欲しい、……って」

そう言うと、今度は小さく息を吐き出した。


「……相談?」


「相手のことを思いやることができなくなったとき、どうすればいいのか。……教えて欲しい、って」


「………」


思いやることができなくなった相手というのは。

仕事関係の、とか。家族とか友人とか。


でも。だけど。

もしその相手が玲香さんにとって特別な存在で、必死になって改善策を見つけたいほど大切な人であったとしても。


かつての恋人に。

福元さんに。

わざわざ相談しに来る必要があっただろうか。


ほんとは。

相談にのって欲しい、だなんて。そんなの口実でしかなくて。

ただ福元さんに会いたかっただけかもしれない。

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