愛かわらずな毎日が。
「彼に、会いに来たわけじゃなくて」
上体を戻した玲香さんの長いまつげが揺れる。
「迷惑だ、って……わかってるけど。でも。
どうしても謝りたかったの。……あなたに、」
「………わ、たしに?」
小さく頷いた玲香さんは、
「きっと。嫌な気分にさせてしまった」
そう言うと、きゅっと口を結んだ。
「…………」
福元さんじゃなくて。私に。
私に会いに来た。
私に謝るために。
「………あの、」
そう言葉を発したものの、あとに続く言葉をすぐには見つけられなかった。
だって。
こんなの、予測不可能な出来事だもの。
「………なんていうか、」
……そうだ。
私、急いでて。
クリスマス限定カラーのお財布を。
それを手に入れなくちゃ、いけなくて。
ケーキも。
予約しておきますね、って言ってあるの。
閉店時間、迫ってるし。
なんてくだらない理由なんだ、と思うかもしれないけど。
ほんと、急いでて。
「………あの、」
微かに震える指先に、ぎゅっと気合いを入れた。
「………ここ、冷えますから。
どこかで。……お茶でも、」
急いでたけど。
でも。
待っていてくれた。
私に謝りたかった、って。
私を。待っていてくれた。