愛かわらずな毎日が。

しばらくテレビの前から動けずにいた私だったけれど、清涼飲料水のCMを目にして、自分ののどの渇きに気づき、ようやく重たい足を動かすことができた。


作り置きしてあった麦茶をグラスになみなみと注ぎ、それを一気に流し込む。

冷たい麦茶が胃へと流れ落ちる感覚はあるのに、胸につかえた重たい鉛のような不安はそこにとどまったまま。


のどが熱い。

ヒリヒリと痛い。


「……そうだ。アイス、食べるんだった」

私は冷凍室を開けると、ファミリーサイズのアイスを取り出した。

ついでに冷蔵庫横のシルバーラックからお菓子が詰め込まれた藤カゴを引っ張り出し、そこにアイスの容器を乗せる。


ずっしりと重みを増したカゴを抱えソファーまで戻ったのに。

「あ、スプーン忘れた」

心とは裏腹に、冷めた様子のひとりごとを呟き、スタスタと食器棚まで歩いて行く。

引き出しを開けカレースプーンを手に取ると、それを口にくわえ、伸びきった前髪を蛇口に掛けられていた輪ゴムでまとめた。


「一度やってみたかったんだよね」

ドスンとソファーに腰を下ろしスナック菓子の袋を開け、1リットルもあるアイスの容器に手をかけた。


番組は既に違う話題に変わっていた。


だいたいこういう時は、番組の終わり頃に、「中継先の○○さーん」なんて呼ばれるのよ。


もう一度、彼氏の姿を確認してやりたかった。

バカみたいにヘラヘラと笑った顔を見てやりたかった。

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