愛かわらずな毎日が。
「ま、……ま、って」
給湯室を出て行こうとした福元さんのワイシャツの袖を、思わず掴んでしまった。
「なにか、用があったんですよね?」
「うん。でも、」
見上げた福元さんの視線が、私を通り越し、ロールケーキに注がれていることに気づく。
「………でも?」
「お取り込み中みたいだから」
「………え?」
「ケーキ。俺のせいで食べられなくなると困るからね」
………あ。
『緊張感よりケーキのほうがうれしかったです』
前に言ってしまった言葉が浮かんできて、私の顔は更に熱くなる。
すみません、と掴んでいたシャツの袖から手を離すと、
「……ケーキのことは、気にしないでください」
と言いながら、チラリと福元さんの顔色を伺う。
どこか楽しげな表情で私を見ていた福元さんが、
「食い物の恨みは恐ろしいから」
と、綺麗にならんだ歯をのぞかせた。
「だ…っ、大丈夫ですっ!恨んだりなんかしません」
「あはは。ごめん、ごめん。
じゃあ、手が空いたらでいいから、営業の部屋まで来てくれる?」
「す…っ、すぐ行きます!」
コピー機の前で森下とお喋りを楽しんでいた香織にケーキの切り分けを頼み、急いで福元さんの後を追った。