スノードーム
走って、走って。
昇降口も校門も行き交う人も擦り抜けて。
肌を刺す空気の冷たささえ無視して、ただ白く染まった世界を走り抜ける。
流れていく景色はまるで先輩から貰ったスノードームのようだった。
「はぁ、はぁ…っ」
どれくらい走ったのだろう。
だんだんと息が苦しくなってきて。
走っていたはずの足の動きは鈍くなり、ついには止まってしまう。
吐き出した乱れた呼吸は真っ白に染まっていた。
膝に手をついて辺りを見渡せば、目の端に映るいつもの通学路。
どうやら無意識に家を目指していたらしい。
静まり返る道路は少しずつ闇が光に勝っていって。
少し不気味な景色だけど、今はそんなこと気にならない。